【JICA事業スキームによる海外博物館建設について】
日本の様々な機関が海外援助を行っていますが、JICAはほんと事業予算規模が違います。日本の文化庁予算がようやく1000億円っていうぐらいなのに、JICAの予算規模は有償無償合わせれば1兆8000億円ぐらいになります。いやー、ほんと桁違い。でも、その中で文化遺産に使える予算は本当に少ない。そして、JICAの予算は文化遺産の修復に予算をそもそも使うことができない。実際に修復事業を始めてみないと、調査を事前にしていたとしても様々な問題が起こりやすいため、事前に予算規模が確定せず、修復期間も想定できません。そして修復後も、道路コンクリート厚などと違って、修復事業の評価ができないという点が大きな問題です。だから、JICAの予算は文化遺産の修復には使えないということになります。しかし、一方で、文化遺産を活用した観光開発協力を行い、地元の生活を向上することはJICAの事業目的にかないます。JICAの使途目的は、あくまで修復や保存ではなく、開発が根底にあります。だから、文化遺産建造物の修復はできないが、その周りに道路を整備したり、文化遺産を紹介する博物館を整備することはできます。世界遺産に関係した援助は宣伝効果が高く、援助の費用対効果も大きい。だからこそ、相手国から、世界遺産の近くに博物館建設の要望があれば、JICAの事業スキームにそって建設資金援助をするケースが増えています。

 現在、JICAの支援の一環として、ピラミッド(エジプト)やペトラ(ヨルダン)の近くなど8つ程の博物館プロジェクトが現在動いています。特に大エジプト博物館は規模が大きく842億円が有償で計上されています。エジプトへの援助は有償(円借款)であるがゆえに相手国の意向が反映された設計ができるため、博物館建設にあたっては国際設計コンペが行われ、アイルランドのアトリエが勝利し、日本の設計事務所や米国のゼネコンが加わってプロジェクトが進んでいます。しかし、無償事業になると、あくまでJICA(日本)側の予算になるため、国の代表的な遺跡のそばに作られる国の重要な博物館であっても、設計コンペが行われることなく、JICAと関係あるコンサルタントによるプロポーザルによって決定されてしまいます。つまり、相手国の要望を聞きながら調整するにせよ、日本では決して博物館コンペで勝てないような人々が、誰も知らないところで海外の博物館建設の受注をしてしまう状況があります。もちろん、海外の事業のため、海外での実務経験やJICAとの付き合い方が分かっている必要はあるでしょう。でも、こんな設計の進め方が本当に相手国のためになるのでしょうか。そして、せっかくの海外での博物館の設計のチャンスを日本人の才能ある設計者に示さない現在のプロポーザル方式は、日本の設計者の能力向上という意味でも最適の方法とは言えないのではないでしょうか。実にもったいない。海外無償援助の博物館建設であっても、適切な設計コンペを通した質の高い博物館設計を望みたい。
関連記事
[2017/10/29 00:14] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
| ホーム | 『ふるさと納税が、政策クラウドファンディングに使えたら』>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://hirokijourney.blog35.fc2.com/tb.php/737-c2fbd58e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |