イタリア日誌-66「移民問題-1」
■イタリアの人口はこの10年近く増加している。

まずは、イタリアの人口統計から。
イタリア国立統計局The Italian National Institute of Statistics (ISTAT)
のデータを参照するとhttp://en.istat.it/

最新のイタリアの人口統計は60.626.442人(2011年)となっている。

ついでに人口の変化を見てみると横ばいだった人口が2002年から一気に増加していることが分かる。(google先生の表。ソースは世界銀行)

まずは人口
s人口変化


そして増加率
s人口増加





■増加の原因はやっぱり移民?
 一時日本よりも低かったイタリア人の出生率もあがっているが、それだけで8年で400万人近くも人口が増えるとは考えられない。人口増加の原因は海外からの移民ということになる。
 s出生率

 むしろ、出生率もイタリア人女性の出生率が高まったというより、移民女性の出生率によって全体の出生率が上がったと理解した方が正しいだろう。(フランスも出生率が変わっているが、移民の影響は大きいだろう。移民、特にイスラム系女性の出生率を考えると50年後にはフランスはキリスト教の国ではなく、イスラム教が主流の国になるとも計算されている。)
 


■どの国からの移民が多い?
 ISTATのデータに戻ろう。まず、移民の統計の最新データでは4,570,317人(2011年)がイタリアにいるとなっている。
ちなみに男女割合を考えると7.5%ほどになる。男性が220万人、女性が237万人と意外にも女性の方が多い。
 外で見かける移民の男女比率とデータの印象が大きく異なるのは、正式に住民登録しているものと不法滞在している人数の統計に大きなズレがあるのか、それとも男性が外で物品販売をして働いている姿のみが目につくからなのだろうか?
 移民の年代別人口として多いのは25~44歳で男女とも4万人を越えている。そのピークが32歳であり、移民が労働人口となっている事も特徴と言えるだろう。本来、イタリアの労働不足を補う優良な移民政策と認められて然りのはずのデータが見えてくる一方で、「移民に仕事を取られている」と怒りを訴える若者達がいる。
 次に国別の人口統計(なぜか2008年が最新だったので、これを参照)を見てみるとルーマニアが76万人を越えて1位だ。それも2006年から2007年の間に34万人から62万人とほぼ倍増している。国別は2位がアルバニア44万人、3位がモロッコ40万人、4位がグッと差がついて中国17万人。(ただし、これは2008年データであり、当然、不法滞在は含めておらず、また旅行者や一時滞在者は含まれない)その後順位はウクライナ、フィリピン、チュニジア、ポーランド、インドと続く。
 当然移民も多いと考えられる近隣ヨーロッパからは意外にも少なく、トップでもドイツが23位(4.1万)、フランスが25位(3.2万)と経済交流の割に圧倒的に少ない。
ちなみに日本は49位で7.296人と記載されている。



■危険視される移民
 先ほどのデータで2002年から大幅に人口増加があったのは、東欧もユーロ圏域に入ったこと、これまで不法滞在という形で、既にイタリアに存在していた移民が滞在許可証を申請し、正式に登録したということが大きいだろう。この滞在許可の発行数も一度に出来なかったこともあり、この図で見るような大幅な増加率ではなく実際には緩やかな増加だったのではないかと予想している。
 ただし、この増加がISTATのデータでも読み取れるが、経済が盛んな大都市や北イタリア、工場地帯に一気に集まっていることもあり、一般の人からは危機感を持って移民を眺められているのだ。また、田舎の村々においても農場従事者として新たに移民に手伝ってもらうことがあるが、彼らが社会コミュニティの文化を壊すと考えられている。事実は分からないが、移民が増えて犯罪が増えた、と地方の人から何度も話を聞かされる。



■移民、特に中国人に対する強い風当たり

ベネチアでのカーニバルでの事を思い出す。

サンマルコ広場に出来た特設ステージ上の司会者が、各国からの観光客に向かって、呼びかけた。
司会者「アメリカから来た人〜声を上げて!」 アメリカ人「ウォー!!!」
司会者「スペインから来た人〜」スペイン人「ウィヤッホー!!!(発狂)」
司会者「中国から来た人〜」  全員「ブーーーーー」

って、何だコレは、、、、

 これほどまでにイタリア国民に嫌われているというのは、明らかに異常ではあるが事実だ。悲しいことに、中国人=諸悪の根源とされている風潮がある。



■中国人の消費行動も問題視される。 

 中国からの旅行者が圧倒的に増えているが、そんなに喜ばれていないのは何故か。昔の日本人みたいに高級ブランドを買い占めている人もいれば、都市の郊外の田舎の駅からたくさんのブランドの袋をもっている中国人が乗車してくるのを見かける。かれらは地方に作られた大(偽モノ?)工場で、買い物をしているようなのだ。
 一般的に中国からの旅行者と言っても、中国系の旅行会社が運営し、中国系のホテルに泊まり、中国料理を食べ、中国の製品を買って行くという流れが作り出されていて、思うように都市にお金を使ってくれていない。この様な中国人コミュニティ内での循環消費傾向も問題にあげられている。イタリアの都市は決して凍結されたディズニーランドではなく、人々が生活している生き生きとした都市=living city (Citta viva)だ。滞在せず、街に溶け込もうとしない観光客は、都市インフラに負担を掛ける邪魔者でしかない。



■そのMADE IN ITALYはイタリア人が作ったもの?

 中国人だけでなく、各国の観光客が買うお土産にも影響が出始めている。Made in Italyと書いてあっても、イタリアに設立された中国人の工場で、中国人が働いて作っている場合がある。中国の工場でイタリア人に監督されて製造されているMade in China製品もあることを考えれば、消費者は何を基準にしたらいいのか分からなくなってしまう。

 もしも、こんなことを購入時に気にするならば、Made in 国名の他に、made by ○○人とか made under ○○人とかの表記を作らないといけなくなってしまう。もしも、こんな表記が出来てしまったら、これはもはや差別主義でしょう。イタリアで作られているなら、工場が(きっと)きちんと税金を納めて、イタリアに貢献しているはず。なのに、どこまで自国産業とするのかは国民感情を含めてしまうからコンガラガッチオーネ。

 個人的には中国であろうがイタリアであろうがいい品物はいいというスタンスだけれども、経済が逼迫して来ている国では、そう穏やかでは居られない。



■イタリアの体質と合わないグローバリズム

 地域を基盤とする社会体系を組んだイタリアはグローバリズムに敵意を向ける。
 自国経済を守れ、自国の産業を守れというスローガンが発せられて、グローバリズムこそが自国を脅かしているという一般世論が出来つつある。何もグローバニズム自体が悪ではないことを、自らの思想の背景によって除外する傾向が強い。

 1968年にローマクラブによって「成長の限界」が提示され、近年には資本主義の限界が指摘されている。資本主義には、努力をすれば何とかなるよ、努力をした人間は幸せになるという建前があったけれども、すでにそんな成功神話が失われている。しかも、先進諸国の人々から見ると、発展途上国レースに遅れて来た人間が多く参加して、自分の横を追い抜いて行くことように思えている。これに対する不満と、みんなで緩やかに生きていこう、周囲の人々と助け合っていこうという地域共同体を主とするイタリアの価値観が揺るがされている。



■移民問題解かずして、都市問題は解決しない。

 イタリアの都市問題の歴史は、50,60年代は破壊された都市の再生やベビーブーマー世代のための住宅供給など「フィジカル」な問題、70年代80年は中心市街地内からの自動車の閉め出しや小規模商店の維持回復など「機能」の問題だった。90年代には目に見えない文化や風景保全などの「メンタル」な問題にも直面し解決を図った。しかし、現代の都市問題は「ソーシャル」な問題が最も強い。そしてその中心にあるのが、移民の問題だ。

 労働力を確保する一方で、どのように社会体制を維持するか。コムーネを単位とした社会体制はイタリアの核だ。この体制にどのように移民を組み込めるか。簡単に見つかる答えなどない。しかし、この問題を解かずして、明るい未来像は見えてこない。




追記:
 グローバリズムに反対していても、世界で貧困にあえぐ人々や自国を脅かしているアフリカ系移民に対して、そして仮想敵国の(ように考えられている)中国の経済もそして中国の環境をも救わねばならないのがグローバリズムであり、不可避であることを突きつけられている。かなり、感情と理性の間で混乱している。
 レース自体を中止する必要はないけれど、この全員が勝てないと分かっているルールをいつまで続けるか。勝者への賞金を減らして参加者に分配すべきなのか。違う方式は無いのか。レースを見守る人間も幸せになれる方法は何だろうか。
 個人の能力を高めるため、常に勉強し続けなくてはならない義務を課されたプレッシャーの多い世界では、相互扶助を前提とした市民社会という理想は蜃気楼のようになりつつある。イタリアでは多くの市民団体によって様々な抗議が行われているが、移民問題だけは孤立しつつあるように感じる。全く解決が見えない。

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[2012/04/24 05:01] | イタリア | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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