[0808022]Jerusalem
 ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

頭の中が混乱している。
一日に2つの異常な世界を見て、それを繋ぐ異常なシステムを目の当たりにしたからだ。
この国の形を知るほど、その形の歪さに困惑させられる。

 パレスチナ自治区(西岸地区)にあるラマンダという街へ。
イスラエルは1948年に独立を果たした。今年は建国60周年。ブッシュ大統領もイスラエルに来てお祝いの言葉を述べた。

60年。

この年月はパレスチナ人にとっては自らの土地を奪われ続けている年月とも言える。

 パレスチナ自治区はイスラエル軍による壁に囲まれている。ベルリンの壁が崩壊して、世界が解放されたように見えた後にこの壁が造られた。自治区に住む多くのパレスチナ人はこの壁を越えることが出来ない。

壁にはベルリンの壁と同様に誰が描いたのか様々な落書きがある。そこには魂の叫びが描かれている。
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[CTRL + ALT + Delete](この国を再起動しろ)
[The Wall must Fall] (この壁は必ず崩壊する)


 西岸地区にはイスラエル建国時の第一次中東戦争の避難民とその子孫で構成されている。はじめはテントしか支給されておらず、いつか自分の土地に帰れるのだろうと考えていた。しかし、60年経った今でも自分の土地に戻れない。土地を奪われたばかりか、避難キャンプから移動することすら出来なくなった。世界はチベットに目を向けているが、欧米諸国と考えられているイスラエルで人権無視、非人道的行為が日常的に行われている。

 今日は西岸地区に住むパレスチナ人に一人一人、一人ひとりの物語を聞いた。

Alba[44]
 彼は元々テルアヒブにて仕事を持って暮らしていたが湾岸戦争時より、テルアヒブには住めなくなってしまった。許可がおりず、仕事も奪われた。ただ、彼はそれまで稼いだ蓄えがあった。そのお金を使ってカナダに観光旅行ビザで入り、不法労働をし、カナダ人と結婚して永住ビザを手に入れた。この国に来たのは家族に会うためだという。
 
 彼にこの国の行く末を聞いてみた。

「これからどんどん悪くなるだろう。ここには仕事はないし、ろくな学校もない。若者は外に出られないし、彼らが犯罪に走る可能性もある。この先、自治区が良くなることはありえない。」

 この国が辿る理想の終着点は?

「パレスチナ人が自分の国を自由に動けるようになることだ。この国は元々小さい国だ。2つの国にするなんてことは馬鹿げたことだ」


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 故郷から離れた平和な世界に立って彼はそう答えてくれた。


Fares[53]
 彼は工具店を営んでいる。難民キャンプから程近い場所だ。彼の家はアマリキャンプの中にある。彼からはパレスチナの状況を聞かせてもらった。現在、ガザ地区は過去40年で最悪の状況を迎えている。たった360km2の土地に150万人が住み、4方を壁で囲まれ、国連の援助部隊すらイスラエル軍は締め出している。電気も、水も、食料も何もない。人が作り出したこの世の地獄だ。唯一協力を望めるエジプトへ人々は決死の覚悟でトンネルを掘っている。しかし、このトンネルすらイスラエル軍によって崩落させられたり、毒ガスを注入されている。食料を得ることすら出来ない。これがテルアヒブで見た繁栄の背後にあるものだろうか。

 彼は自治区で生まれた。父親がイスラエル軍に土地を奪われ、ここに逃げてきた。彼の父親はオスマントルコ時代より多くの土地を所有していたそうだ。今の国際空港の土地も彼の父親の土地の一部だった。彼はアラビア語で書かれた土地の権利証を見せてくれた。

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しかし、イスラエルによる占領の後ではただの紙切れと見なされている。


彼は生まれたときから自治区に住んでいる。今でも、父親の土地に戻りたいのかと聞いてみた。

「当たり前だよ。ただ、土地を返してくれと言っているわけじゃない。ただ自由に自分の国を歩きたいだけなんだ。コンクリートの壁で閉ざされてから私は17年間外に出ることが出来ずにいるんだ。私が危険な人間に見えるかい?一緒に暮らすべきなんだよ。私たちは。」

この国の理想像を聞いてみた。

「もちろん、スイスみたいに様々な言語、民族が混ざり合って一つの国を作るが理想だ。でも、現在の最終合意は1968年の第三次中東戦争のときのグリーンラインを確立できればいいんだ。そうすればここ(西岸地区)はとりあえず落ち着くことが出来るはずなんだ」


 現在イスラエルは国連合意に基づいた境界線を無視し、これに食い込む形で壁を作り、ユダヤ人を入植させている。はっきり言って人口密度から言っても入植させる必要など全くないにも関わらずだ。この強硬な姿勢は一体どこからくるのだろうか。平和的な解決など望んでいないかのようだ。理解に苦しまない人間がいるだろうか。


Muhammad(56)
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 彼はアマリキャンプに住んでいる。物心ついたとき、ここには何もなかったそうだ。しかし、ここに住む知識人や職人が偉大な努力を払って少しずつ少しずつ街らしくしていった。

 戦争時の一時避難のはずが何日たっても何年経っても戻れるようにはならないからだ。イスラエル軍は村々を襲い、何人かを殺害し、残る村人は何も持たずに逃げるしかなかった。キャンプには突然の悪夢にあった人々の子孫が住む。

 彼は甘物屋を営んでいる。彼は私にケーキをご馳走してくれ、拙い英語で語ってくれた。
彼の店には息子と娘の写真が飾れている。写真の息子は銃を持って精悍に構えている。彼の息子はイスラエル軍に抵抗し、そして捕縛されたそうだ。
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 彼の娘の写真はまだ若い、美しい娘の写真だった。彼女は母(彼の奥さん)と共にイスラエル軍の誤爆によってバスごと破壊されたそうだ。



 夕暮れ、厳しい検問を超えてエルサレムに戻る。ユダヤ人の祝祭日前の夕方(シャバット)であったため、黒塗りスーツに黒塗り帽子のユダヤ人が嘆きの壁の前で群れをなしていた。彼らは頭を揺らし、祈る。何人かは祈りのためにトランス状態に入っている。
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 ただでさえ異常な光景だった。これが頭を激しく混乱させた。あの牢獄の街は彼らの生活を守るために造られ、彼らの悲願を叶えたことで新たな難民を生み出した。ローマに滅ぼされた70年よりユダヤ人は離散民となった。パレスチナ人はイスラエルによって離散民となった。
現在、パレスチナに在住するパレスチナ人は約400万人、ヨルダン在住の難民が300万人、その他の国への移民や難民を含めると約940万人であるといわれる。


 この国は「恐怖」に駆られている。ホロコーストの歴史と僅か450万人という人口が恐怖を生んでいる。パレスチナ人を敵と見なし、武器を持たない敵に向かって怯えている。「恐怖」が人を異常に走らせる。
 国家予算の多くを軍隊に使い、貴重な人材に兵役を課し、街を歩けばレストランやデパートに入るのですらセキュリティチェックを受ける。明らかに過剰なセキュリティだ。必ず国が疲弊する。金銭的にも精神的にもだ。

 この国はいつまで見えない敵に怯え続けるのか。いつかイスラエルは「恐怖心」によって自ら崩壊するだろう。
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[2008/08/22 23:50] | 世界一周旅行 | トラックバック(0) | コメント(5) | page top
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コメント
ちは~  
ちは~!!ナポリのYHで出会った同業の建築家のnaoki です!僕の方は3か月の旅が終り、foto整理などしているところです!そういえば、と思い、ロッキーのHPを拝見させてもらいましたが、本当に色々な国を旅されていて、良建築を押さえていて、そしてその国の自然や社会に直に接している感がビシビシ伝わってくるいい旅日記ですね!!ナポリの後、僕の方はローマ、トスカーナ地区、ミラノ等を回り、その後フランスを回る予定でしたが、ミラノまで行ったらツェルマットが近いし見るべきとの情報を聞き、向って、その後せっかくスイスに入ったし、、ということでズントーのスパ(僕も完璧な建築だと思いました!!)や教会を見たり、バーゼル、ルツェルン、チューリッヒなど何都市か回って、フランスの何都市かコルビュジェを中心にして現代建築を見たりして、最後の町ロンドンにて少し疲れが出つつテートモダンなどをみて先週無事日本へ帰ってきましたよ!! 旅を終えるとやはりさみしいし、ロッキーの旅日記をみると、ますますまた旅したいな~と思ってしまします!! でもこれから旅で得たものを活かして、実務を積みたいと今は思っています!!ロッキーはいつ日本へ帰ってくるんだっけ?12月だっけ?戻ってきたら是非再会して、お互いにオーバーレイしている所の話は共有できるし、その他の話も聞かせて下さいな!!とにかく体には気を付けて、さらによい旅を続けて、無事帰ってきてな!! ではまた
もも
[2008/08/25 00:33] URL | naoki #- [ 編集 ]
パレスチナの壁はちょっと前に調べていたので興味深いです。
帰国したら写真見せてくださいね。
[2008/08/25 21:03] URL | mina #- [ 編集 ]
>naokiさん
帰国されたんですね。思えばナポリはずいぶん前の話になってしまいました。
ヨーロッパは見るものが多いので本当に疲れますよね。行き方を考えたり、最新建築を調べたり、パーミッションを取ったり、、、建築家ならではの高速移動もしますし。無事帰国でなにより。私も11月中旬に帰国します。

帰国後すぐに帰国報告会をしますので、そのときには是非来てください。
建築に特化した報告会は、別途やるかもしれません。

帰ったら仕事ですね。旅もいいですが、建築も楽しいですね。旅と仕事と両方出来るのが最高だと感じてますよ。

また、ブログに遊びにきてください。
では

>mina
 おう。パレスチナの壁は恐ろしいよ。ジャーナリストの人に色々と話を聞かせてもらったがとんでもない状況。欧米のダブルスタンダードが露骨に現れている。パレスチナの若者はすぐに警察に捕まり、撃たれ、暴行を受けている。その写真は取れなかったが、容易に事実と分かる。

[2008/08/26 22:47] URL | hiroki #HCMoIRP2 [ 編集 ]
11月の報告会に是非声掛けてくださいな!!
また旅日記とスケッチ楽しみにして、拝見させてもらいますね~!!

[2008/08/29 00:23] URL | naoki #- [ 編集 ]
>Naokiさん
おう、こちらこそ楽しみにしているよー
[2008/08/30 22:28] URL | Hiroki #- [ 編集 ]
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