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農業が地域に果たす役割
 フェッラーラ県はイタリアでも有数の肥沃な農業地帯(Distretti rurali) として指定され、かつ、その大部分が世界遺産サイトの保護区域にも指定されている。地域の農風景を守る事は世界遺産の価値を保つ事でもある。「農」を中心にして、どのように地域の価値を向上させているか、その取り組みを紹介する。

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図 エミリアロマーニャ州の農業地帯。フェッラーラ県は図上右上に位置する

フェッラーラ県内のコムーネの一つ、ボギエラ(Voghiera)は市内全てが世界遺産保護ゾーンであり、かつ農業地帯に指定されている。フェッラーラ市からは約16km離れ、市域面積は40㎢、人口は約4000人である。主な地域経済は伝統的なフルーツ、甜菜と小麦を主とした農業である。歴史的資源としてはローマ時代のネクロポリスの他に、世界遺産の文化財としてフェッラーラ県に点在するエステ家の美しい別荘の一つ、デリツィア・ディ・ベルリグアルドが有名である。

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図 Delizia di Berliguardo

 デリツィア・ディ・ベルリグアルドは1435年にニコロ三世(1393-1441)公爵の夏の別荘として建設された。当時は、この別荘の正面からフェッラーラ市までが運河によって結ばれており、現在もその遺構を残している。このボギエラの「人と自然の共同作業」による風景は文化的風景として認識されており、この歴史遺産と結びついた農業風景を守る事が世界遺産としての価値の保護になる。一方で農業は地域住民にとっての重要な生業でもある。ボギエラでは農業を通じて経済的な側面から地域住民の生活を守り、かつ農業に結びついた地域の文化•価値を保って行く、地域農業を核とした戦略がとられている。この鍵となるのが、「D.O.P.」(保護指定原産地呼称)」、現地農業会社や「商業ブランド」「個人農業者の団結によるコンソーシアム」である。これらがどのように文化的景観保護(地元経済、環境保護、景観保護、文化保護)に役立っているかを視点にしてこの地域の事例を見てみたい。


■ D.O.P.(食品原産地認定)の役割
イタリアでは地域の特産を守る為の食品原産地認定には、1963年に制定されたイタリアの食料品原産地認定(DOC: Denominazione di Origine Controllata)があり、その上位分類として1984年に新設された原産地名称保護制度(DOCG:Denominazione di Origine Controllata e Garantita)がある。現在はEU法である保護指定原産地呼称(DOP:Denominazione di Origine Protetta=英語ではPDO:Protected designation of origin /1992年)に並列•準拠している。また、地域の特産品の名前を守るためにはIGP=protected geographical indication =(PGI) の制度がある。指定されている食品例としてパルメッジャーノ•レッジャーノなど特定のチーズや生ハムなどが挙げられる。

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図  ボギエラとD.O.P.の生産指定地のおおよその範囲(黄色)


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図 ボギエラのニンニクとD.O.P.認証マーク

ボギエラではフェッラーラ県のニンニク生産量のうち実に70%を担っている。このニンニクはコムーネや農業会社の取り組みによって2010年にD.O.P.に指定された。 イタリアの食処エミリア•ロマーナ州では、D.O.P.に指定された品は35品目にも及ぶが、フェッラーラ県内では初めて、かつ唯一である。


このニンニクをより価値づけていくために、フェッラーラ県内で配られる観光ガイドブックなどで歴史やその美味しさを紹介するとともに、夏期には各種のイベントを開催し、ファーマーズマーケットによる直売なども行っている。今後は共にQRコードを利用して消費者が地域生産保証だけでなく、ボギエラのニンニクにまつわる文化や物語、ニンニクを使ったレシピなどが見られるように、更なる宣伝と一層の価値付けを狙っている。


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図 歴史的資産のベルリグアルドを活用した農業祭は14年続いている。また、ニンニクを学び味わう料理教室やクッキングレビュー等が行われている。

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図  ニンニクの髪飾り。食が地元の文化と密着している。

 ニンニクと文化に基づく話として、考古学的にはボギエラは7世紀までポー川流域の支配的な役割を持ち、湾やラベンナ港に続く道のアクセスを提供していた。エステ家支配の中頃、エステ家はこのエリアの農業を刺激し、温室で多くの農作物も育てていたようだ。特にサラダやハーブ、ニンニク等に注意が払われていた旨、古くからの記述が残されている。

D.O.P.を取得した効果として、生産者の経済成長、耕地の価値向上、風景の特徴付け、農業地帯のアイデンティティの価値創出(つまり優秀な農業:ニンニクと、卓越した文化:ベルリグアルド及びボゲンザ古墳(Necropoli Voghenza)とを併せた相乗D.O.P.効果)、異なる関係者の間の対話と交流体制の向上などをボギエラの評議員 は挙げている。また、D.O.P.を付けた事により、ボギエラのニンニクは市場価格において約2〜3倍の値段で販売されているとマッゾーニ社の技術担当者は説明してくれた。
D.O.P.の経済的、生産的な効果として

•農家とパッケージング、マーケティングがD.O.Pの元に構成される事
•生産者連合によるコンソーシアムの強化
•B&Bなど、観光的な側面に貢献した事
•美食の観光的な側面で貢献した事

などが挙げられている。


このD.O.P.は認定時に定義された規則に従ってコントロールされ、D.O.P.の指定地域内で生産されたニンニクのみがD.O.P.認証を受ける事が出来る。D.O.P.として認定されるためには、例えば、茎の部分が残り、色は白く、皮は12〜14枚、大きさは直径40mm以上でなければならないといった基準がある。

この基準を技術的にコントロールするには、労働者の手の他に、機械によって重さごとにニンニクを分別する等、近代的な設備が必要となる。後述するマッゾーニ社の他、地域内の工場においても各農家で取れたニンニクを集めて製品化している。工場での選別時に形の悪いものは2等品として販売され、大きく形が欠損してしまったものは貧民の為の食に提供される。

地域が抱える農業の問題点は公汎に広がってしまっており、コムーネ内のエリアに限定的な問題は抱えていない。畑で働く移民労働力の利用は大きな次元の問題であり、地域農業による影響とは正確には言えない。季節労働者は特に東欧からが多く、畑での住み込み季節労働者となっている。


■ 官民の協力
D.O.P.の誕生には官民の協力が大きい。ボギエラでの地元農業文化を土台とした、公共-民間が参加したwin-win適用モデルを説明する。まず1999年より自治体がサポートする若い起業家グループによってニンニクの再評価が始まり、D.O.P.と地元農家の技術によって獲得出来るCTM(欧州共同体商標)を信じて進められた。経済的、伝統的、地元の参加の側面から地域独自の栽培としてのニンニクを広めたいと考えた。

また、D.O.P.登録のために大学もボギエラニンニクの品質特定に協力している。ニンニクに関してフェッラーラ大学が実施した3年にも及ぶ研究によって特定の遺伝子を持つニンニクであることが定義され、ボギエラニンニクの生化学的および遺伝的特性がこのエリアで100年以上に渡って自然淘汰されて生み出された事を証明している。科学成分は硫黄化合物、酵素、ビタミンB群のミネラルとフラボノイドと揮発性油の完璧なバランスを持ち、この土地の特性や気候、地元農家の農業手法によって自然淘汰的に培われてきたものであることが明らかになった。



■ 地域農業会社が地域に果たす役割
マッゾーニグループ(以下、マッゾーニ社)は60年代から続く家族経営の会社であり、約50年の歴史を持つ。ボギエラで最も大きい農産物関連会社であり、例えばボギエラ市内で生産されるニンニクの内60%がマッゾーニ社によるものである。従業員が1000人規模のマッゾーニ社は研究、苗づくり、生産、販売の4つに別れて経営を行っている。フェッラーラ県、エミリアロマーニャ州の中でも最も重要な会社の一つである。

1983年、マッゾーニ社は地域内の他会社と共にCIV(Centro Innovazione Varietale) という研究センターを作り、イチゴや林檎、梨、新たな野菜のブランドづくりに取り組んだ。現在マッゾーニ社の研究センターはCIVの一部に含まれている。CIVでは、先ず研究によって種木を作り、地域農家と契約して、ブランド製品を作り出している。
たとえば、2年前から販売が開始された新しい林檎のブランド“Modi”は、苗木名“Civg198”として開発され、既に10年近く木の種木作りを重ねている。この苗木を農場従事者にプロモーションを行って販売し、契約時には文書による契約を交わす。契約の中には、技術提供や栽培手法の指定、この苗木から生産された林檎はマッゾーニを含む数社にしか取引できない等の条項がある。この数社は主に“Civg198”の研究開発に関わった会社のグループである。
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この“Modi”の販売による利益のうち、1%は“Modi”の宣伝のために活用され、2%はCIVの研究機関に還元される。
こういったブランドが購入者に対して安全、安心、味を保証するものであることはもちろんだが、地域に与える影響面においても、栽培時に水や農薬の使用量を抑えるなど地域の環境への負担を減らす取り組みを行っている。
この“Modi”の生産に当たっては、マッゾーニ社の直轄農地での独自生産と、契約した地域農家からの買い付けという2つの手法が用いられており、生産されたものは後述する現地コンソーシアム(事業連合)と連携して、製品化、出荷している。また、マッゾーニ社はコンソーシアム内の農家に対して農業指導も行っている。


彼らのオフィスは地元の崩壊した教会を修復して使っている。ニンニク工場もベリグアルド宮近くの建物の再利用である。この建物の修復に際しては地元の特徴ある色遣いを使って復元するなど地域の歴史を保つ事に貢献している。
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図 ベルリグアルド宮近くのニンニクの工場。修復して利用。色彩は現地の文化に基づいた色を使用している。

他にもトラギガッロ市(Tragigallo)の出荷工場ではファシスト時代に作られた建物を再利用している。
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この建物は歴史的に貧困地域であったこの土地に農業用の施設として建設され、その後石鹸工場、ジャム工場を経て放棄されていた。これをコムーネ主催の事業提案コンペにおいて1994年にマッゾーニ社が勝ち取り、2004年から現在のような利用を開始している。このように、地元の会社が歴史資産に積極的に関わり、文化の保持に貢献とするとともに、自社製品の付加価値づくりにも役立てている。

最後に、巨大企業であるマッゾーニ社は、環境への新たな取り組みとして、林檎の生産過程においても水の節約、農薬使用の抑制、出荷時の防腐剤不使用、太陽光発電やバイオガスの積極活用などを行っている。今後は新たに、ニンニクの生産過程でゴミに出される皮を使ってバイオガスを作成する取り組みを始めるとのことである。このように、企業イメージの向上と共に環境負荷の減少に取り組んでいる。
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マッゾーニ社は巨大であるがゆえの批判もあるが、地域の経済を動かし、マッゾーニ社以外も含めて地域農業を発展させた事は事実だろう。



■地域コンソーシアム が果たす役割
CICO(Consozio Italiano Cooporative Ortofrutticole)は8つのアソシエーション(7つがフェッラーラ県内、1つが海外)によるコンソーシアム(事業連合)である。この8つのアソシエーションには、計約100の農家が参加している。農家は生産者であるため、作物を製品化するのにCICOとして体制を組んでいる。マッゾーニ社はCICOと協力し、主に製品化、出荷を担当している。CICOはEUからの金銭的援助を得て運営されている。このCICOでは多くの野菜•果物を取り扱う。工場内での作業はISOの基準に沿って進められ、このコントロールにはマッゾーニ社の協力によるところが大きい。CICOの地元への経済的な役割も大きく、地元10km圏内に渡って多くの雇用を作り出している。また、マッゾーニグループで働く1000人の内150人程度がこのCICOの運営に関わっている。

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図 Tragigallo にあるCICOの工場  よりよい食品の選別のために、それぞれの野菜ごとのスペシャリストを育てている。

一つ一つの農家では販売までコントロール出来ないが、アソシエーション、コンソーシアムを組む事で、世界的な動きに対応出来るようになっている。ここで製品化されたものはヨーロッパ中に運ばれて行く。このように、小作農であっても連携してコンソーシアムをつくり、民間企業とも協力しながら大きな体制を作る事で、グローバルの時代においても競争力を保っている。

ボギエラは公共/民間の協力を推進している。農村地域における観光事業者のネットワークを強化する為にD.O.P.を利用し、市とコンソーシアムは地域の強化を進めている。
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[2013/03/14 11:08] | イタリア | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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