上海日誌62-「冷静に冷静に」
「人が歴史から唯一学べる事は、人は歴史から何も学べないという事だ。」
 村上春樹の小説の一説を思い出す。

 旅の中でイスラエルや中東、東ヨーロッパなど民族対立がある地域を回り、一人一人と対話して感じたのは何故こんなにも善良な人々が他の民族に激しい敵意を向けるのかということだ。

 僕らは学んだはずだ、如何に国が戦争の為にマスメディアを使っているかを。しかし、現実には学んだ成果は出ていない。
今日の中国の新聞には日本がかつてないほどの自衛隊の増強を行い、尖閣諸島沖(魚釣島)の周辺を軍事基地化するという記事があった。そこにはもちろん中国の軍事力の拡大のデータなどついていない。情報は公平ではない。そのニュースの目的は自国民の恐怖をあおることぐらいしかない。
 尖閣諸島沖がどちらが所有権を持つかは、お互い譲らないだろう。こんな事に結論が出る訳はない。国際裁判でもなんでもすればいいじゃないかと思うが、2国間の領土問題となると、他の国の介入も出来ないというのが実情だろう。

 しかし、この領土問題と民間の交流は別の話。それなのに民間の交流まで阻害されるとは。国が市民に敵意を与え、マスメディアが脅威を煽り、憎しみの種をまく。これほど恐ろしい事はない。こんな状況になれば、日本と関係があるというだけで建築コンペには負け、打ち合わせはうまく行かなくなる。人は意外と影響されやすいものなのだ。自分の意思というより、共同体のムードというものに。

 そしてこのニュースを書いている人間が、その結果を恐れていない事だ。見えないうちに、意識しないうちに、憎しみの種が植え付けられる。出会った事のない人、ニュースを見なければ知らなかった島に対して、国益という枠組みを作り出して敵を作り出す。

 中国が正しいとしても、今の状況を生み出す国には正義はない。スマップの訪中を楽しみにしていた女の子に何も罪はないからだ。彼らに日本を憎む事を強要するのはどうなのか。日本のマスコミもそうだ。中国の主張する正当性をきちんと伝えていないのではないか。日本人は中国人が冷静になれない国民だと思ってはいないか?知識のない人だと思っていないか?日本人より優秀で勤勉も多い。しかし、絶対数が多いために興奮する人々が目立っているだけだ。

 中国は交渉がうまい。悪気なく自分に有利な状況に持って行く技術に長けている。日本人的にはなし崩し的に主張して来るずる賢いなんて思うかもしれない。しかし、それに対して真面目に怒ったら、中国のルールではタブーなのだ。相手を笑って理を説き、とんちをつかって尊敬させ、相手の面子も立つ適当な落としどころを作る。日本人は真面目だし、政府も真面目すぎるのだ。理にかなっている事をきちんと主張するのが当たり前だとは日本人なら思うけれども、その「当たり前」が違うのだ。そして困った事にどんなに言葉を使っても分かり合えないのだ。
 その分かり合えない友人がいるということを理解すべきだ。君の言う事は全く反対だけれども、君が話すことを僕は全力を掛けて守るというのは民主主義の礎だ。生活の中で自分の周りに何か強引な人だなぁと言う人がいても、日本人ならある程度うけ流すだろう。真面目に取り合わず、きちんと面を向かって言うならば仲間とか色々な状況を作ってから話すだろう。2人間では話さないはずだ。
 
 交渉力では圧倒的に中国の人のが上だ。日本人は商人ではなく職人なのだから職人の誇りを持って商人と向かい合わなければならないはずだ。それなのに職人である事を忘れ、口で勝負しようとすれば負ける。立ち振る舞いで自分の必要さ、重要さを相手に納得して貰うのが職人だ。真面目に怒って手を挙げたら持ってのほかだ。ぼろぼろにされてしまうだろう。

 話がそれた。要するに、冷静に冷静に。この間上海ではたった2元の駐車料金を巡って7人が喧嘩し4人が死にました。中国にはそんなエスカレートしたら止まれない国民性を持っている人もいます。とにかく冷静に。10日前には知らなかった尖閣諸島沖に対して、全員が怒り、国益とか何とか蘊蓄を垂れている人たちを眺め、滑稽だと思わないといけない。
 
 日本も今回ばかりはしっかり言いたいのも分かるけれど、
 少なくとも中国は止まれません。面子が大事だから。
 大人の対応、損する対応かも知れませんが、興奮した相手に対して油を注いでもいい結果にはならないと思う。
 どちらの主張が正しいとか間違っていなくても先ずは冷静に。
 そして相手はヤクザなのではなく、日本と同じように自国の主張を正しいと信じている善良な国と市民であるという立場にたたないといけないと思う。
 2国間(台湾を入れて3国)の領土問題に関しては仲裁に入れる国なんてないので、このままいくとまずいことになります。少なくとも中国で働く僕らにとっては迷惑極まりない。悪い影響が出てきています。


 ま、個人的には本当は台湾に所属していたとしている尖閣諸島沖(魚釣島)なのだから、台湾の漁船が捕まって、台湾がそれに抗議するならばわかる。しかし、中国が尖閣諸島沖(魚釣島)の領土問題を主張するのであれば、その前に台湾は中国のものだということ、ないし台湾という国は世界に存在しないという中国の主張が国際的も承認されてから、日本に主張するのが筋だろうと思うのだけれど。
[2010/09/22 11:26] | 上海日誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
上海日誌62「尖閣列島、中国での報道について」
こちらでも尖閣列島(魚釣島)の件、大きく報道されています。

で、日本の報道だと日本に正当性があるように書かれているけれど、当然中国では「日本が不当にも船長を逮捕している。日中の友好を中国が進めていて、努力していい関係になってきたのに日本があえて愚かにも喧嘩を売って、中日関係を壊そうとしている。その態度に全く理解出来ない.]と報道されています。

 中国の人はなんて感情的なんだとか、無知なんだとか、何でもでかい声を出して自分の都合の良いようにするとか、中国は拡大路線に走っているとか、軍事力を笠に着て外交を強硬に進めているとか 、日本だと考えられがちですが、

 中国の一般市民の日本に対する感情も同じ。

とても不幸なこと。

 正確かどうかも分からない情報、報道に振り回されて、自分の生活とは直接に関係のない場所に対して憤怒し、出会った事もない中国人に対して敵意を抱くというのは不幸を通り越して、とても恐ろしい。

 もし、自分が日本のニュースを見ておらず、中国だけのニュースを読んでいたら、自分が日本人でなかったら 今の状況をどう捉えていたか、少し立ち止まって考える必要があるんじゃないか。

 9月11日。世界は出会った事もない人に、利用された宗教に対して憤怒し、敵意を向け、その矛先をアフガニスタンとイラクだった。今の状況は小さな怒りで、まだ被害も出ていない。けれど、当事国の国民の感情(自分の感情)にもだけれどもうっすらでも そんな敵意が生まれていないかシッカリと自己分析してみないといけないんじゃないか。もちろん市民が悪いのではなく、それを煽る情報が悪い。しかし、常に自分が情報コントロールされていることを意識しないといけない。でなければ、自分が知らないうちに正義を主張する加害者になる。

 今、2カ国住んでいるけれども、この2カ国が当時国になってしまうと冷静に判断が出来なくなる。やはり3つぐらいの国に拠点を置くのがバランスがいいんだろうな。なんて思った。アメリカかイギリスかな。


 ちなみに台湾の同僚はあの島はうちのものでしょ。なんて言ってましたが。

ちなみに上海は平和です。旅行者の方ご安心を。
[2010/09/18 13:49] | 上海日誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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